青色申告と白色申告、どっちを選ぶべき?フリーランスデザイナーの結論

26歳でフリーランスになったとき、確定申告の「せ」の字も知らなかった私が最初に迷ったのが「青色申告と白色申告、どっちにすればいいの?」という問題でした。

当時の私の判断はこうでした。「青色申告って複式簿記とかいうやつが必要なんでしょ?なんか難しそうだから、白色でいいか」。

この判断が大きな間違いだったと気づくまで、1年かかりました。この記事では、制度の比較はもちろん、私が青色申告に切り替えてから感じた本音も含めてお伝えします。

まず「白色申告のほうが楽」という思い込みを解除する

2014年以降、白色申告も帳簿作成・7年保存が義務

「白色申告は記帳が不要だから楽」——これは過去の話です。

2014年1月以降、白色申告者にも帳簿の作成と保存が義務づけられました。収支をきちんと記録して、7年間保存する義務があります。「何も書かなくていい」という時代は、10年以上前に終わっています。

白色申告の保存義務(2014年以降)
法定帳簿:7年間保存
任意帳簿・関連書類:5年間保存

つまり、白色申告を選んでも帳簿をつけることからは逃げられません。「申告方法の違い」は、実質的に「控除を受けられるか、受けられないか」の違いになったんです。

会計ソフト時代、両者の「手間の差」はほぼゼロになった

もうひとつの誤解が「青色申告は複式簿記が必要だから大変」というイメージです。

確かに、手書き時代の複式簿記は難しかった。でも今はfreeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトが、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込んで仕訳してくれます。「複式簿記」といっても、実際には画面上で確認・修正するだけ。簿記の知識がゼロでも普通に使えます。

白色申告も帳簿をつけなければならない。青色申告も会計ソフトで自動化できる。この2つが揃ったことで、実務的な手間の差はほぼなくなりました

青色申告と白色申告、何が違うのか表で整理する

控除額・赤字繰越・減価償却……主な違いを比較

まず全体像を表で確認します。

項目青色申告白色申告
事前申請必要(青色申告承認申請書)不要
特別控除最大65万円なし
帳簿の種類複式簿記(ソフトで自動化可)単式簿記
赤字の繰越最大3年間可能不可
少額減価償却の特例あり(30万円未満を一括経費化)なし
専従者給与全額経費計上可原則不可
記帳・保存義務あり(7年)あり(7年)

控除以外にも、赤字の繰越や少額減価償却など、青色申告にしかない特典がいくつもあります。

青色申告の控除は「65万・55万・10万」の3段階——条件は何が違う?

青色申告の特別控除は一律ではなく、記帳方法と申告方法によって3段階に分かれています。ここは正確に理解しておきたいポイントです。

控除額記帳方法申告方法
65万円複式簿記e-Tax(電子申告)または電子帳簿保存
55万円複式簿記紙申告(郵送・窓口提出)
10万円単式簿記(簡易帳簿)申告方法問わず

最大の65万円控除を受けるには、複式簿記での記帳に加えてe-Tax(電子申告)か電子帳簿保存のどちらかが必要です。紙で申告しても55万円の控除は受けられますが、65万円にはなりません。

ちなみに10万円控除は、単式簿記(簡易な帳簿)で申告した場合に適用されます。「とりあえず青色申告は申請したけど、複式簿記まではやっていない」という状態がこれに当たります。

フリーランスデザイナーに青色申告をすすめる3つの理由

①65万円控除で、税負担が数万円単位で変わる

65万円の特別控除は、課税所得から65万円をそのまま差し引けるということです。所得税と住民税を合わせた実質的な節税効果は、所得水準によって変わりますが、年収300〜500万円のフリーランスであれば年間10万〜20万円前後の差が出てくるイメージです。

白色申告を続けることは、毎年数万円〜十数万円を捨て続けているのと同じ。この事実を知ってからは、「青色申告に切り替えない理由がない」と感じるようになりました。

②PC・ソフトを30万円未満で買えば、その年に全額経費にできる

青色申告者には「少額減価償却資産の特例」という制度があります。取得価格30万円未満の資産を、購入した年に全額経費として計上できるというものです(年間合計300万円まで)。

デザイナーにとってこれは非常に大きなメリットです。

  • MacBook(25万円)→ 購入年に全額経費
  • Adobeの年間ライセンス(10万円超)→ 全額経費
  • ペンタブレット(3万円)→ 全額経費
  • 外付けモニター(5万円)→ 全額経費

白色申告だと、これらは減価償却として数年に分けて計上しなければなりません。青色申告なら購入した年に一気に経費化できるので、その年の税負担を大きく下げられます。

③開業初年度の赤字を、翌年以降に繰り越せる

フリーランス初年度は、PCや機材の購入、事務所の初期費用などで出費がかさんで赤字になることがあります。白色申告では、この赤字は「なかったこと」になります。翌年以降の所得と相殺することができません。

青色申告なら、純損失を最大3年間繰り越して、翌年以降の黒字と相殺できます

たとえば、1年目に50万円の赤字が出た場合、2年目の所得が150万円であれば、繰越損失50万円を差し引いた100万円が課税所得になります。事業が軌道に乗るまでの不安定な時期を、税制上のセーフティネットとして活用できるのが青色申告の強みです。

「青色申告は難しい」は本当か?freeeを使った私の実感

複式簿記が難しいのは「手書き時代」の話

「複式簿記」という言葉を聞いて身構える人は多いと思います。私もそうでした。「借方・貸方って何?」「仕訳って?」というレベルからのスタートでした。

でも実際にfreeeを使い始めてみると、画面には「借方・貸方」なんて言葉は出てきません。「何のために使ったか」を選ぶと、勘定科目が自動で設定されます。銀行口座と連携すれば、明細が自動で取り込まれ、AIが仕訳の候補を提案してくれる。あとは「これで合ってるか」を確認するだけ。

最初の1〜2ヶ月は「これで本当に合ってるの?」と不安でしたが、3ヶ月もすると感覚がつかめてきました。

freeeなら、会計知識ゼロでも仕訳が自動でできた

freeeを使って青色申告をしてみて気づいたのは、「難しいのは会計の概念を理解することであって、作業そのものは難しくない」ということです。

実際の作業は、ほぼこの3つです。

  • 銀行口座・クレカの明細が自動取り込みされるので、仕訳を確認・修正する
  • 手元の領収書をスマホで撮影してアップロードする
  • 年度末に「申告書を作成する」ボタンを押す

国税庁のe-Taxシステムと連携すれば、そのままオンライン申告まで完結します。これで65万円の特別控除が受けられるなら、使わない理由がありません。

2027年改正で「紙申告」の旨みがなくなる

55万円控除が廃止予定——今のうちにe-Taxに慣れておくべき理由

現在は紙申告でも複式簿記であれば55万円の控除が受けられますが、2027年(令和9年)の税制改正予定では、この55万円控除が廃止になる可能性が指摘されています。改正後は「e-Tax申告で65万円」か「紙申告で10万円」の二択になる見込みです。

つまり、今のうちにe-Taxに慣れておかないと、将来的に控除額が55万円から10万円に大幅ダウンするリスクがあります。

今すぐe-Taxに移行する必要はありませんが、「いずれ必須になる」と頭に入れておいて、会計ソフトと併用する準備を早めに整えておくのが得策です。

それでも白色申告が向いている人はいる

ここまで青色申告をすすめてきましたが、すべての人が今すぐ青色申告に切り替えるべきとは言いません。

BtoC中心で収入が小さい・副業レベルの場合

個人のお客さん相手の小規模な仕事や、副業レベルの活動であれば、青色申告の手続きコストが見合わないケースもあります。収入が年間100万円以下で、税負担もごく小さい場合は、白色申告でシンプルに管理するのが現実的な選択です。

「青色か白色か」を判断するための簡単チェックリスト

迷っている方は、まずこの4点を確認してみてください。

  • 年間の事業収入が100万円以上ある → Yesなら青色申告の控除メリットが出やすい
  • PC・ソフト・機材を30万円未満で購入することがある → Yesなら少額減価償却の特例が効く
  • 開業初年度や不安定な時期が予想される → Yesなら赤字繰越のために青色申告を選ぶべき
  • クラウド会計ソフトを使う意欲がある → Yesなら複式簿記のハードルはほぼゼロ

4つすべてYesなら、今すぐ青色申告に切り替えることをおすすめします。

まとめ:フリーランスデザイナーなら、迷わず青色申告を選んでいい

「白色申告のほうが楽」は2014年以降は誤解です。「青色申告は難しい」は会計ソフト時代の誤解です。この2つの思い込みを外せば、フリーランスデザイナーの選択肢は青色申告一択に近くなります。

最後に要点をまとめます。

  1. 白色申告も帳簿作成・7年保存が義務。手間の差は思ったほどない
  2. 青色申告の控除は3段階。65万(e-Tax+複式簿記)・55万(紙+複式簿記)・10万(単式簿記)
  3. デザイナーには「少額減価償却の特例」が強力。30万円未満の機材・ソフトを一括経費化できる
  4. 赤字繰越(最大3年)で、開業初期の不安定な時期をカバーできる
  5. 2027年の税制改正予定に備えて、今のうちにe-Taxに慣れておくと安心

まだ白色申告を続けている方は、今年の申告から切り替えることを検討してみてください。青色申告承認申請書の提出期限は、その年の3月15日まで(1月16日以降に開業した場合は開業から2ヶ月以内)です。思い立ったときが動き時です。