法人化のタイミング、私はこうして決めました【売上の目安も公開】

フリーランスとして働いていると、ある時期から必ず「法人化、どうする?」という問いが頭をよぎります。

私はグラフィックデザイナーとして26歳からフリーランスを始めて、32歳のときに法人化しました。その6年間、「まだ早いかな」「でもそろそろかな」を繰り返しながら、最終的に決断した経緯があります。

「何売上になったら法人化すべきか」「実際どう変わったのか」を、自分の数字を公開しながら正直に書いていきます。法人化を考えているフリーランスの方の、判断材料になれば嬉しいです。

まず私のケースから。法人化を決めたのは売上〇〇円のとき

フリーランス6年間の売上の推移

結論から言うと、私が法人化を決めたのは売上が年間1,200万円を超えたタイミングです。以下が実際の推移です。

フリーランス年数年齢年間売上(概算)状況
1年目26歳約350万円副業からの独立直後
2年目27歳約500万円取引先が安定してきた
3年目28歳約650万円継続案件が増える
4年目29歳約800万円初めて税理士に依頼
5年目30歳約950万円顧問契約に切り替え
6年目31歳約1,100万円法人化を本格検討
7年目(法人化)32歳約1,200万円合同会社→株式会社に変更

「そろそろかな」と思い始めたきっかけ

法人化を本格的に考えたのは、フリーランス6年目の確定申告が終わったあとです。税理士に「今年の所得税、けっこう増えましたね」と言われたとき、数字を見て正直ぞっとしました。

売上が増えるのは嬉しいけれど、税金も比例して増えていく。しかも、個人事業主の所得税は累進課税なので、稼げば稼ぐほど税率が上がっていく構造になっています。「このまま個人事業主でいていいのかな」と思ったのが、法人化を真剣に考えるきっかけでした。

「売上1,000万円」が一つの目安になる理由

消費税の納税義務が発生するしくみ

法人化のタイミングとして「売上1,000万円」という数字がよく言われます。これは消費税の納税義務と関係しています。

国税庁のタックスアンサー(No.6501)によると、前々年の課税売上高が1,000万円以下の場合は消費税の納税義務が免除されます。つまり、個人事業主として売上が1,000万円を超えると、その2年後から消費税の課税事業者になります。

私の場合、フリーランス5年目(売上約950万円)に翌年の1,000万円超えが見えてきたとき、「再来年から消費税を払うことになる」という現実が迫ってきました。

法人化すると消費税の免税期間が2年リセットされる

ここがポイントです。新しく設立した法人は、原則として最初の2期間(2事業年度)は消費税が免税になります。資本金が1,000万円未満であれば、設立1期目・2期目は消費税を納める必要がありません。

つまり、売上1,000万円を超えたタイミングで法人を設立すると、個人事業主として課税事業者になる前に法人格に切り替えて、新たな免税期間をスタートできるわけです。

ただし、インボイス登録済みの場合は少し話が変わる

2023年10月からインボイス制度が始まり、「適格請求書発行事業者」として登録すると、免税事業者であっても消費税の課税事業者として扱われます。私はインボイス登録を済ませていたので、この「消費税のリセット」メリットはやや限定的でした。

インボイス登録の有無によって法人化のメリットが変わる点は、税理士に事前に確認しておくことをおすすめします。

「所得900万円」でも法人化を考えるべき理由

個人事業主の所得税は33%まで上がる

所得税は累進課税です。課税所得が増えれば増えるほど、税率が段階的に上がっていきます。

課税所得所得税率
195万円以下5%
195万円〜330万円10%
330万円〜695万円20%
695万円〜900万円23%
900万円〜1,800万円33%
1,800万円〜4,000万円40%
4,000万円超45%

フリーランス6年目で売上1,100万円になったとき、経費を差し引いた課税所得が900万円を超え始めました。所得税率が23%から33%に上がるライン。正直、この変化が一番こたえました。

法人税率は約23%——税率が逆転する分岐点

一方、法人税の実効税率(法人税・地方税などを合計したもの)は、中小企業の場合おおよそ23%前後です。

つまり、個人事業主として課税所得が900万円を超えると、所得税率33%が法人税率23%を上回ります。この「逆転ライン」が、よく言われる「所得900万円で法人化を検討すべき」という話の根拠です。

役員報酬という仕組みで節税できる

法人化すると、自分に「役員報酬」として給与を払う形にできます。これが節税上、大きな意味を持ちます。

役員報酬は法人の経費(損金)になるので、法人の利益を圧縮できます。さらに、役員報酬を受け取る側(=自分)にとっては「給与所得」として扱われるため、給与所得控除が使えます。個人事業主には給与所得控除はありませんが、給与所得者には最低でも55万円の控除があります。

「法人として利益を出し、自分に給与を払う」という構造にすることで、全体の税負担を最適化できるのが法人化の大きなメリットの一つです。

法人化してよかったこと、正直に全部話します

経費の範囲が広がった

法人化して最初に実感したのは、経費にできるものの範囲が広がったことです。

自宅兼事務所として使っている部屋の家賃は、個人事業主のときは業務使用割合に応じた按分(私の場合は20〜30%程度)しか経費にできませんでした。法人の場合、社宅として会社が借り上げる形にすると、より大きな割合を経費化できます。

また、会社の保険や将来の退職金の積み立てを法人の経費として計上できるようになったのも大きかったです。「将来のための準備が税務上も認められる」という感覚は、個人事業主時代にはなかったものでした。

社会保険に切り替わって、老後の安心感が増した

法人化すると、国民健康保険・国民年金から、健康保険・厚生年金に切り替わります。

これが正直、最初は「社会保険料、高っ」と思いました。保険料の総額は国民健康保険時代より上がります。でも厚生年金は会社(=自分の会社)と折半で払う形になり、将来受け取れる年金額が増えます。傷病手当金(病気や怪我で働けなくなったときの所得補償)も使えるようになりました。

フリーランスって、病気になったら収入がゼロになるリスクがあるじゃないですか。その不安が少し和らいだのは、精神的にけっこう大きかったです。

「法人です」という信用がじわじわ効いてきた

これは予想外のメリットでした。法人化後、新規の取引先から「請求書、法人名義でお願いします」と言われたとき、個人事業主のままだったら受けられなかった案件かもしれないと思いました。

クライアントによっては、個人事業主とは契約しない方針のところもあります。単純に「法人格がある」というだけで、商談が前に進みやすくなることはあります。目に見えにくいメリットですが、積み重ねると大きいです。

法人化して後悔した部分も正直に言います

よかった話だけじゃフェアじゃないので、正直に言います。

社会保険料が思ったより重かった

先ほど「安心感が増した」と書きましたが、毎月の社会保険料の支払いは想像以上にきつかったです。法人として支払う会社負担分と、個人として支払う本人負担分、合わせると年間で数十万円規模になります。

法人化直後は売上がそこまで伸びていない時期と重なることもあり、「固定費が増えた」というプレッシャーは正直ありました。

赤字でも7万円かかる「法人住民税の均等割」

法人化してびっくりしたのが、法人住民税の均等割です。資本金1,000万円以下・従業員50人以下の会社でも、法人住民税の均等割として年間7万円程度(都道府県民税2万円+市区町村民税5万円)が必ずかかります。

しかも、赤字でも関係なく払わなければなりません。売上が少ない年でも、この固定費は変わらない。個人事業主には赤字なら税金がゼロになる感覚があったので、「赤字でも払う税金がある」というのは最初、なかなかの衝撃でした。

税理士費用が個人事業主時代の倍近くになった

これは前の記事でも書きましたが、法人化後の税理士費用は個人事業主時代の倍近くになりました。法人決算は申告書の種類が多く、処理が複雑なので仕方ないのですが、毎年36万円前後の税理士費用は確実にコストとして意識します。

株式会社と合同会社、どっちにすべき?私の選択と理由

法人化を決めたとき、次に悩んだのが「株式会社にするか合同会社にするか」でした。

設立費用の比較

項目株式会社合同会社
定款の認証(公証役場)約5万円不要
登録免許税(法務局)15万円6万円
定款の収入印紙4万円(電子定款は0円)4万円(電子定款は0円)
合計目安約20〜24万円約6〜10万円

設立費用だけ見ると、合同会社の方が10万円以上安くなります。

私が株式会社を選んだ理由

費用だけ考えれば合同会社の方がお得なのですが、私は株式会社を選びました。理由はシンプルで、「クライアントに説明するとき、株式会社の方が伝わりやすい」と感じたからです。

合同会社は「LLC(Limited Liability Company)」とも呼ばれ、近年認知度が上がってきていますが、まだ「株式会社より格下」と思っているクライアントもいます。特にBtoB取引が中心のデザイン業では、対外的な信用を重視した方がいいと判断しました。

費用の差(約14万円)は、長期的な事業運営を考えると大きな差ではないと思いました。

「法人化すべき?」チェックリスト

「自分はまだ早いのか、もうすべきなのか」と迷っている方のために、判断の目安をまとめました。以下の質問に当てはまる数が多いほど、法人化を前向きに検討する段階です。

売上・所得の状況

  • 年間売上が1,000万円に近づいてきた、または超えた
  • 課税所得が900万円に近い、または超えている
  • 消費税の課税事業者になるタイミングが迫っている

仕事・取引の状況

  • 法人格がないと断られる取引先・案件がある
  • 継続的な大口案件があり、売上が安定している
  • 従業員や外注スタッフを雇うことを検討している

将来・資産形成の観点

  • 退職金や保険を経費として積み立てたい
  • 社会保険(厚生年金・健康保険)に加入したい
  • 事業承継や将来の売却・資金調達を視野に入れている

私が法人化を決めたときは、上の9項目中7〜8項目に当てはまっていました。

法人化を考え始めたら、税理士への相談が最初の一歩

「法人化すべきかどうか」を自分だけで判断するのは、正直難しいです。消費税のタイミング、所得税と法人税の比較、社会保険料の試算……数字が絡む判断は、プロに相談して試算してもらった方が絶対に早いし、正確です。

私が法人化のタイミングで改めて税理士探しをしたときに使ったのが、法人化後の税務を任せられる税理士を業種・規模別に比較できる「税理士ベスト」です。法人化の相談から決算申告まで対応できる税理士を業種・規模に合わせて紹介してもらえるので、「法人に強い税理士を探したい」という方にはおすすめです。

「法人化すべきか相談したい」という段階から受け付けてくれる税理士もいるので、まだ迷っている段階でも一度相談してみると、判断がぐっと楽になります。

まとめ:正解のタイミングは人それぞれ。でも「早すぎ」はない

法人化のタイミングに、唯一の正解はありません。売上1,000万円という数字も、所得900万円という数字も、あくまで目安です。

ただ、私が6年間のフリーランス生活を経て思うのは「法人化を検討するのに早すぎるタイミングはない」ということ。早めに情報収集して、自分の数字と照らし合わせて準備しておくと、いざというときに慌てずに動けます。

「まだ早いかな」と思っているうちに知識を蓄えておくこと、そして信頼できる税理士に早めに出会っておくことが、法人化をスムーズに進める一番の近道だと、今の私は思っています。